私塾主宰40年 ・ 田中保成の雑記録

主に受験・教育・社会について、長年の経験を踏まえて、語ります。

英単語が覚えられません・・・。 大丈夫!

まず学習において「暗記する」とはどういうことなのか、「考える」とはどういうことなのかということを教わっていない人が多くいるようです。その理屈がわかり自分に合った暗記法さえ見つければ短期的暗記力に関しては個人差はほとんどありません。

 以前英語の偏差値70代と40代の生徒にそれぞれに合った暗記法を指導した後,ドイツ語の単語を暗記してもらったことがあります。その結果はほとんど大差はありませんでした。

 そもそも暗記とは2つの事柄に関係性を持たせて記憶に留めることです。例えば,りんごの映像とapple の綴りをリンクさせる,apple の綴りとその読みである音をリンクさせるというような場合です。それを連鎖的に記憶しておいて連鎖的に思い出せる人が暗記力が良いと言われているようです。つまり,1つの事柄で多くの事柄を関係づけて想起する能力が高い人が暗記力が良いということになります。

 では、どうすればその暗記力を身につけることができるかということになりますが、その前に暗記する方法について考えてみましょう。じっと眺めて映像で覚える人,ぶつぶつ唱えて音声で覚える人,ひたすら書いて身体的動作で覚える人,人に教えている場面を想定して演技として覚える人、曲をつけて覚える人など数え上げたらきりがありません。そして,いろいろ試して自分に合った暗記法を採用すればよいですし、いくつかを合わせた暗記法を作りだしてもかまいません。というのは、どんな暗記法を採用したとしても暗記力の良し悪しには関係ないからです。

 結果としての暗記力に一番関係する要素は、暗記するためにかかる時間を知っているか、覚え切るための脳のスタミナを養成しているかという2点です。

 例えば,英単語1000個を90%定着するために何時間必要かを考えてみましょう。私の40年の経験では日常生活で見聞きする中学英単語であれば200時間もあれば暗記できますが、日常生活と無縁の高校英単語であれば500時間ぐらいは必要でしょう。その根拠は10単語を1時間で覚えることを100回で100時間、次に20単語を1.5時間で覚えることを50回で75時間、3回目40単語を4時間で覚えること25回で100時間、4回目50単語を3時間で覚えること20回で60時間、5回目100単語を5時間で覚えること10回で50時間、6回目200単語を8時間で5回で40時間、7回目250単語を5時間で4回で20時間、8回目500単語を5時間を2回で10時間、そして、9回目1000単語で5時間 となるので合計460時間になるからです。

 本来1時間かかるところを10分で暗記できると勘違いして取り組むと20分が経過した時点で気力は萎えて30分経過した時点では「自分は暗記が苦手」と結論付けてその不愉快さから逃れようとするでしょう。どんな科目でも大学受験レベルの用語はそう簡単に暗記し使いこなせるものではありません。とにかく、暗記にかかる所要時間を正確に把握している指導者を見つけることです。

 次に重要な要素は脳のスタミナです。よくヤル気と勘違いしている人が多くいます。私の40年の経験では、いくらヤル気があっても脳のスタミナが切れると「やりたくない」という感情が湧き起るはずです。それは脳の自己防衛ともいうべきもので健全な精神的現象だと思います。ですから、暗記を始めて20分で疲れたと感じた人は第一段階では1ラウンド15分で暗記できる量で計画を立てればよいのです。それを継続しているうちにだんだん15分では物足りなくなります。そのとき、1ラウンド20分とか30分とかに計画を変更するのです。

 つまり、覚え切るための所要時間を知り、自分の脳のスタミナを客観的に把握していれば「暗記は得意です」と言い切れるのです。

 次に「考える」とはどういうことなのかについては次回お話ししましょう。